採用コストの内訳とは(広告費・紹介手数料・工数・早期離職という「隠れコスト」)

採用コストと聞くと、多くの経営者がまず思い浮かべるのは求人広告の掲載費用や人材紹介会社への成功報酬でしょう。しかし、実際にかかっているコストはそれだけではありません。大きく分けると、次の4つの要素で構成されています。

1. 広告費・紹介手数料という「見える」コスト

求人媒体への掲載料、人材紹介会社に支払う成功報酬は、請求書として明確に金額が出るため、経営者が最も意識しやすい部分です。中途採用にかかる一人当たりの平均コストは103.3万円という調査結果もあり、2018年度の83.0万円から2年で2割以上上昇しています(株式会社リクルート「就職白書2020」)。求人媒体の掲載費用が上がり続けているという実感を持つ経営者は少なくありません。

2. 採用担当者・経営者自身の「工数」というコスト

中小企業では採用業務の多くが経営者や総務担当者の兼務です。求人票の作成、応募者対応、面接調整、内定者フォローに費やす時間は請求書には出てきませんが、その分だけ本来の業務に充てられるはずだった時間が削られています。この工数を時給換算すると、広告費以上の負担になっているケースも珍しくありません。

3. 早期離職という「隠れコスト」

採用にかけた広告費・工数をすべて回収する前に、採用した人が数ヶ月から1年ほどで辞めてしまう。これが最も重い「隠れコスト」です。育成にかけた時間、引き継ぎのための負担、そして「また一から採用活動をやり直す」ための広告費が、二重三重に積み重なっていきます。中小企業の人手不足の相談を掘り下げていくと、実は「採れない」のではなく「定着しない」ことが本質的な課題だったというケースは多く見られます。

かけ続けても採れない、という構造

求人広告費を上げれば応募が増える、というのは短期的には正しいことがあります。しかし、この方法には限界があります。応募が減れば掲載費を上げ、採用できても数年で離職し、また同じ広告を出し直す。この繰り返しの中で、採用のコストだけが積み上がっていく構造に陥っている企業は少なくありません。

特に中小企業の場合、大手企業と同じ広告媒体・同じ条件で戦おうとすると、賃金や知名度の差でどうしても不利になりがちです。広告費を増やす方向でこの差を埋めようとすると、コストは際限なく膨らんでいきます。採用コストが下がらない企業の多くは、「広告の出し方」ではなく「広告に頼り続ける構造」そのものに課題を抱えています。

「コスト」を「投資」に変える発想

採用コストという言葉は、どうしても「かかるもの」「削るべきもの」という響きを持ちます。しかし、同じお金や時間の使い方でも、「一度きりの出会いに広告費を払う」のか「その後の定着・活躍につながる出会い方に時間をかける」のかによって、意味合いは大きく変わります。

たとえば、応募者との面談に時間をかけて「なぜこの会社で働きたいのか」「入社後に何を任せたいのか」をすり合わせることは、一見遠回りに見えます。しかし、ミスマッチによる早期離職を防げれば、その分の再募集コストがまるごと不要になります。採用コストを下げるための最初の一歩は、広告費を削ることではなく、「どこにお金と時間をかければ、定着・活躍につながるか」という優先順位を見直すことです。

広告以外にも、人と出会う接点がある

求人広告や人材紹介以外にも、人と出会う方法はあります。たとえば、学生が一定期間企業に入り込んで実際の事業に取り組む長期実践型インターンシップは、「まず一緒に働いてみる」ところから始まるため、入社後のミスマッチが起きにくいという特徴があります。数ヶ月かけてお互いを見極めたうえで採用につながるケースもあれば、インターン自体が目的で採用にはつながらないケースもありますが、いずれにしても広告費だけに依存しない接点を持てることに意味があります。

また、採用担当者を新たに雇う余裕がない企業にとっては、社外人事部のように、採用や人材育成の機能そのものを外部の力を借りて整えるという選択肢もあります。広告を出すこと自体を目的にせず、「自社に合う人と出会うための接点をどう設計するか」から考え直すことが、コストの構造を変える鍵になります。

まずは、リスクの低い一歩から

採用コストの見直しは、いきなり広告費をゼロにすることではありません。まずは自社の採用コストが何にどれだけかかっているのかを、広告費・工数・早期離職の3つの視点で棚卸ししてみることから始められます。そのうえで、「今すぐ人を採らなければならない」のか、「まずは一部の業務を任せられる関わり方から試したい」のかによって、取れる選択肢は変わってきます。

一人で結論を出そうとせず、外部の視点を借りて自社の採用コストの構造を整理してみることも、遠回りに見えて実は最短の一歩になることがあります。

まとめ

採用コストは、広告費・紹介手数料という見える費用だけでなく、採用担当者の工数、そして早期離職という隠れたコストまで含めて考える必要があります。かけ続けても採れない構造から抜け出すには、広告費を増やす発想から、「定着・活躍につながる出会い方」に時間とお金を使う発想への転換が有効です。人材育成や外部人材の活用も含めて、広告に依存しない採用のあり方を一緒に考えてみませんか。