評価をしない評価制度とは何か

「評価をしない評価制度」とは、文字通り社員の仕事ぶりを一切見ないという意味ではありません。年に1〜2回、点数やランクを付けて序列化する従来型の人事考課の比重を下げ、日々の対話や1on1を通じて、評価という行為そのものを日常の運用に溶け込ませていく考え方を指します。海外の人事領域では「ノーレイティング」と呼ばれ、評価そのものを廃止した企業の事例が話題になったこともありますが、日本の中小企業にとって現実的なのは、全廃ではなく比重の見直しです。

大切なのは、「評価する・される」という一方通行の関係から、「一緒に目標をすり合わせ、進み具合を確認し合う」という双方向の関係に変えていくことです。制度としての精緻さを追い求めるより、日常のコミュニケーションの質を上げることに力点を置く発想と言い換えることもできます。

人事考課が「時代遅れ」と言われる背景

ネット上で「人事考課 時代遅れ」という言葉が検索されるようになった背景には、いくつかの変化が重なっています。

事業の変化スピードに評価サイクルが追いつかない

年度初めに立てた目標が、半年後には状況が変わって意味を持たなくなっていることは珍しくありません。特に中小企業では、経営環境の変化や急な受注・欠員に応じて、担当者の役割そのものが変わることもあります。年1〜2回の評価サイクルでは、こうした変化に追いつけません。

働き方・価値観の多様化

正社員だけでなく、副業人材や時短勤務者など、多様な働き方をする人が同じ職場に混在するようになりました。画一的な評価基準では、それぞれの貢献を公平に測ることが難しくなっています。

若手世代が求めるフィードバックの頻度

半年に一度の評価面談を待つより、日々の仕事の中でこまめにフィードバックをもらいたいという若手社員の声も増えています。評価が「年に一度の儀式」になっていること自体が、当事者の実感と合わなくなってきているのです。

点数化・ランク付けの限界

点数やランクで評価する仕組みには、運用上避けにくい限界があります。

評価者によってブレが生じる

同じ仕事ぶりでも、評価者が違えば点数が変わることがあります。特に評価者が複数の部署を兼務している中小企業では、評価基準のすり合わせに十分な時間を割けず、社員から見て「なぜこの点数なのか分からない」という不満につながりやすくなります。

「頑張っても変わらない」という実感

評価が給与や昇進に直結する制度であるほど、点数を上げること自体が目的化してしまう場合があります。本来評価は成長を後押しするための手段であるはずなのに、評価のために動くという逆転が起きてしまうと、社員のやる気を削ぐことにもなりかねません。

短期的な数字ばかり追ってしまう副作用

評価項目が数値目標に偏ると、目先の数字を達成することが優先され、中長期で見て会社にとって大切な行動(後輩の育成、新しい挑戦など)が評価されにくくなることがあります。

評価を手放す代わりに何をするか:対話と1on1で機能させる

点数化への依存を下げた分、何で補うのか。多くの企業が行き着くのが、対話の頻度と質を上げるという発想です。

1on1の頻度を上げる

年に1〜2回のまとまった面談ではなく、月1回、あるいは隔週といった短いサイクルで、上司と部下が仕事の進み具合や困りごとを話す時間を持つ企業が増えています。評価のためというより、軌道修正のための対話です。

目標をこまめにすり合わせる

期初に立てた目標を期末まで固定するのではなく、状況の変化に応じて対話の中で目標そのものを見直していきます。目標が現実と乖離したまま評価されることを防ぐ効果があります。

フィードバックのタイミングを変える

評価面談の場だけでなく、日々の仕事の節目でその都度フィードバックを伝えることで、社員は「見てもらえている」という実感を持ちやすくなります。

制度そのものを大きく作り変える前に、まず対話の頻度を見直すところから始める企業も少なくありません。評価制度の基本的な考え方を整理した評価制度とは何かや、実際に制度をつくる工程を解説した人事評価制度の作り方もあわせて参考にしてください。

まとめ

評価をしない評価制度とは、評価そのものをやめることではなく、点数化・序列化への依存を下げ、対話と1on1を軸にした運用へと軸足を移す考え方です。人事考課が時代遅れと言われる背景には、事業の変化スピードや働き方の多様化があり、点数化には評価者によるブレや数字偏重といった限界があります。制度を精緻にすることよりも、日々の対話の質を上げることから見直してみてはいかがでしょうか。