DX人材とは何か

DX人材とは、デジタル技術を活用して業務や事業の仕組みそのものを変革できる人材を指します。単にITツールの操作ができる人材(IT人材)とは異なり、業務課題を理解した上で、どこにデジタル技術を当てはめれば成果につながるかを構想し、実行まで動かせる人材という意味合いが強い言葉です。

総務省の令和4年版情報通信白書によれば、企業でDXが進まない理由として「人材不足」を挙げる企業が67.6%にのぼり、最も多い回答となっています。デジタル人材育成という言葉が多くの企業で検索される背景には、DXそのものへの関心以上に、担う人がいないという切実な現実があります。

中小企業ほど人材の「兼務」が課題になる

大企業であれば専任のDX推進部門を置くことも可能ですが、中小企業では、経営者や総務担当が本来業務と兼務でDXを担当せざるを得ないケースがほとんどです。専任で腰を据えて取り組む体制がないまま「DXを進めろ」と言われても、具体的に何から着手すればいいのか分からず、検討だけが先送りになってしまうことも少なくありません。

育成・採用・外部活用、どれを選ぶべきか

DX人材が社内にいない場合、選択肢は大きく3つに分かれます。

社内でのDX人材育成・リスキリング

既存の社員にデジタルスキルを学ばせるリスキリングは、業務知識をすでに持つ人材がデジタルの視点を身につけるという意味で、成果が出れば最も自社にフィットしやすい方法です。ただし、学習には時間がかかり、実務と並行して進める負荷も大きいという課題があります。特に、対象者が「今の仕事で手一杯」な状態のまま学習だけを求めても、多くの場合、途中で止まってしまいます。

専門人材の採用

即戦力としてDX人材を採用できれば早く進みますが、経済産業省の試算では2030年に最大約79万人のIT人材が不足すると予測されており、中小企業が単独で採用市場に挑んでも、大手企業との競争に苦戦しやすいのが実情です。給与水準や勤務地の自由度など、大手企業が優位に立ちやすい条件が多いことも、中小企業にとっての壁になっています。

外部人材の活用

採用にこだわらず、必要な期間・範囲だけ外部の力を借りるという選択肢もあります。フルタイムでの採用が難しい中小企業ほど、この選択肢の重要性は増しています。プロジェクト単位で専門人材と関わることで、育成や採用にかかる時間を待たずに、目の前の課題に着手できるという利点もあります。

単独ではなく組み合わせる視点を持つ

実務では、育成・採用・外部活用のどれか一つに絞り込むのではなく、当面の課題は外部人材の力を借りて解決しながら、並行して社内の担当者がリスキリングで基礎を身につけ、将来的には採用も検討するというように、時間軸をずらしながら組み合わせるケースが多く見られます。

副業DX人材の受け入れで、社内に知見を移す

DX人材育成の選択肢の中でも、近年広がっているのが、副業として他社で働く人材を受け入れる方法です。副業DX人材の受け入れが育成の観点でも有効なのは、単に作業を代行してもらうのではなく、その人と一緒にプロジェクトを進める過程で、社内の担当者にデジタルの考え方や進め方が移っていくという側面があるからです。

  • 最初から全社のDXを丸ごと任せるのではなく、特定の業務課題に絞って一緒に取り組む
  • 社内の担当者を必ずペアにして、進め方そのものを吸収できるようにする
  • プロジェクト終了後も、社内で同じ考え方を再現できるところまでを目標にする

丸投げにしないための注意点

副業人材を受け入れる際に陥りやすいのが、「専門家に任せておけば安心」という丸投げの姿勢です。これでは、プロジェクトが終わった瞬間に社内の知見はゼロに戻ってしまいます。副業DX人材を受け入れる目的が「今すぐの課題解決」だけでなく「次に自社だけで動けるようになること」まで含まれているかどうかを、受け入れる前に整理しておくことが重要です。

DXリスキリングを社内研修だけで完結させようとすると、学んだ知識が実務にどう活きるかが見えにくく、途中で止まってしまうことがあります。実際のプロジェクトを外部人材と一緒に動かしながら学ぶ形は、座学よりも実務に近い形で知見が定着しやすいという特徴があります。

まとめ

DX人材は、育成・採用・外部活用のいずれか一つを選ぶのではなく、自社の状況に応じて組み合わせることが現実的です。特に、フルタイムでの採用が難しい中小企業にとっては、副業人材の受け入れを通じて、社内に知見を移しながらDXを進めるという選択肢が、無理のない一歩になります。丸投げにせず、社内の担当者が一緒に動く設計にできるかどうかが、DX人材育成が進むかどうかの分かれ道になります。