なぜ人手不足は「慢性化」するのか、その正体は定着の穴

人手不足には、繁忙期や欠員による一時的なものと、何年も同じ状態が続く慢性的な人手不足があります。後者に共通するのは、採用の入口ではなく、定着の出口に穴が空いているという構造です。せっかく時間とコストをかけて採用しても、数ヶ月から数年で離職してしまい、また同じ求人を出し直す。この繰り返しが「万年人手不足」という状態を作り出します。

厚生労働省の調査によると、2022年3月に卒業した新規学卒者のうち、3年以内に離職した割合は高卒で37.9%、大卒で33.8%にのぼり、事業所の規模が小さいほど離職率が高い傾向が確認されています。中小企業にとって、これは決して他人事の数字ではありません。せっかく育て始めた若手が、育成の途中で抜けてしまう経験を持つ経営者は少なくないはずです。

厄介なのは、この穴が見えにくいことです。求人票の見直しや採用チャネルの変更には目が向きやすい一方、「なぜ辞めていくのか」という定着の問題は、日々の業務に追われる中でつい後回しにされがちです。結果として、採用の努力だけが積み重なり、慢性的人手不足という状態から抜け出せなくなります。

採用だけを頑張り続けることの限界

採れない、辞める、また採るという循環に入ると、多くの会社がまず取る手段は「採用にもっと力を入れる」ことです。求人媒体を増やす、掲載費を上げる、紹介会社を併用する。どれも間違った打ち手ではありませんが、定着の穴がふさがれないまま採用だけを強化しても、入れた分だけ抜けていくという状態は変わりません。

採用担当者の疲弊が悪循環を加速させる

中小企業では採用業務が経営者や総務担当の兼務になっているケースがほとんどです。離職と採用が繰り返されるたびに、その兼務者の負荷だけが積み上がっていきます。よくあるケースでは、「今期もまた1人分の採用活動をゼロからやり直す」という徒労感が、経営者自身の疲弊にもつながっていきます。

採用は本来、事業を前に進めるための手段であるはずが、慢性的な人手不足の会社では「穴を埋めるための作業」になりがちです。この状態が続く限り、採用にかけた時間もお金も、次に辞める人のためのコストになってしまいます。

悪循環を断つ3つの視点:定着・育成・魅力

慢性的な人手不足から抜け出すには、採用そのものを見直す前に、定着・育成・魅力という3つの視点で自社を見つめ直すことが効果的です。

定着:辞める理由を具体的に把握する

「なんとなく合わなかった」で片づけず、入社後どのタイミングで、どんな理由で離職が起きているのかを具体的に洗い出すことが出発点になります。入社直後の孤立感なのか、任される仕事のミスマッチなのか、原因によって打ち手はまったく異なります。

育成:任せられる人を計画的に増やす

属人的な仕事の任せ方をしている会社ほど、一人が抜けた時の打撃が大きくなります。誰が何を教えるかを決め、育成の道筋を仕組みとして持つことで、新しく入った人が力を発揮するまでの時間を短くできます。人材育成とは?中小企業が最初に押さえる基本と進め方で、育成の考え方を詳しく整理しています。

魅力:給与以外で選ばれる理由をつくる

大手企業と同じ条件で競うことが難しい中小企業にとって、任される裁量の大きさや、経営者との距離の近さは、実は強みになり得ます。組織としての魅力を言語化できているかどうかが、応募の段階から定着後まで効いてきます。

外部人材という選択肢で、採っても辞める悪循環を断つ

定着・育成・魅力の3つを整えるには時間がかかります。その間、目の前の業務が回らないという現実もあります。ここで検討したいのが、正社員採用だけに頼らない外部人材の活用です。

副業や兼業といった形で、都市部の専門人材が期間限定で中小企業の課題に関わるケースが増えています。フルタイムで採用する前に、まず必要な力を必要な分だけ借りることで、「早く採らなければ」というプレッシャーから離れ、本当に必要な人材像を考え直す時間を持てます。これは組織の土台そのものを整えることにもつながります。強い組織とは?で、外部人材と組織づくりの関係を扱っています。

慢性的な人手不足は、採用を頑張れば頑張るほど深みにはまることがある、少し厄介な課題です。だからこそ、採用の外側にある定着・育成・外部人材という選択肢を、早い段階で視野に入れておくことが遠回りに見えて近道になります。

まとめ

慢性的な人手不足は、採用の失敗ではなく定着の穴から生まれていることがほとんどです。採用にどれだけ力を入れても、辞める理由が放置されたままでは同じ状態が繰り返されます。まずは定着・育成・魅力という3つの視点で自社を見直し、それでも足りない部分は外部人材で補うという発想を持つことで、悪循環の入口を変えることができます。